スマートフォンの普及により、思春期の子どもたちが日常的にSNSに触れる時代になりました。
InstagramやTikTokなどの利用が、心の健康にどう影響するのか気になる方も多いのではないでしょうか。
「SNSは思春期のメンタルを悪化させる」
という話を耳にすることが増えています。
しかし、実際の影響は一人ひとり大きく異なるという研究結果が報告されています。
本記事で紹介するのは、Ine Beyens氏らが2021年に発表した
「Social Media Use and Adolescents’ Well-Being」
という論文です。
387人の若者を3週間追いかけ、合計約3万5千件のデータを集めた大規模な調査となっています。
研究の中身を、教育や子育てに関わる人にも分かりやすく解説していきます。
目次
論文の概要

研究の対象と目的
この研究は、オランダの思春期の若者387人を対象に行われました。
調べたかったのは、SNSの使い方によって心の状態がどう変わるかという点です。
具体的には、3種類のSNSの使い方に注目しています。
SNSの使い方は人によって心への影響がまったく違うという仮説を検証する内容でした。
どのように調べたか
研究では
「経験サンプリング法」
と呼ばれる手法が用いられました。
これは、1日に何度もスマホへ通知を送り、その瞬間の気分を答えてもらう方法です。
3週間で集まったデータは34,930件にのぼりました。
これだけ膨大な日常データを分析することで、一人ひとりの傾向を細かく見られたのです。
結果の概要
調査の結果、SNSの影響パターンは大きく3つに分かれることが分かりました。
影響を受けない子、悪い影響を受ける子、良い影響を受ける子の3グループです。
同じアプリを使っていても、出る影響は人によって正反対になることが示されました。
ポイント
研究の基本情報を整理すると次の通りです。
- 対象:オランダの思春期の若者387人
- 期間:3週間の集中的な追跡調査
- データ量:合計34,930件の回答
- 分析方法:一人ひとりの時系列を個別に解析
分かったこと

最も重要な発見
最も大きな発見は、影響の出方が驚くほど多様だったという点です。
45%の若者は、どのSNSの使い方をしても気分に変化がなかったと報告されています。
つまり、半分近くの子どもにとってSNSは心への影響をほぼ持たないようです。
SNSの影響は全員一律ではなく、個人差が非常に大きいという結論が導かれました。
もう一つの注目ポイント
残りの若者の中でも、反応はきれいに二分されました。
28%は気分が下がる方向に影響を受けたという結果です。
一方で、26%は気分が上がる方向に影響を受けることが確認されました。
同じ行動でも、ある子には毒になり、別の子には薬になる構造が見えてきます。
意外な結果や副次的な気づき
従来の研究では
「友だちとのやり取りはプラス、見るだけはマイナス」
と言われてきました。
しかし、この理論通りの反応を示した若者はたった1人だったのです。
「能動的か受動的か」
という単純な分け方では実態を捉えきれないと言えるでしょう。
3つのグループ
SNSの影響別に若者を分類すると、以下のような割合になりました。
- 影響なしグループ:約45%
- 気分が下がるグループ:約28%
- 気分が上がるグループ:約26%
日常で活かせること

「うちの子は大丈夫」を一律に決めつけない
まず大切なのは、思い込みで判断しないという姿勢です。
「SNSは悪」
「SNSは時代の流れだから問題ない」
のどちらも正解ではありません。
家庭や学校では、目の前の子ども一人ひとりの様子を観察してみましょう。
同じアプリでも反応はまったく違うという前提を持つことが第一歩になります。
使った後の気分を一緒に振り返る
具体的な方法として、SNSを使った後の気分を言葉にしてみることが役立ちます。
「見た後、楽しかった?それとも疲れた?」
と問いかけるだけでも、自分の傾向に気づくきっかけになるでしょう。
学習者自身が自分の心の動きを観察する習慣をつけたいところです。
利用時間より「使い方の質」に注目する
ルール作りでは、時間制限だけに偏らない工夫も求められます。
大事なのは、どのアプリで誰と何をしているかという中身ではないでしょうか。
気分が下がる使い方が分かれば、その部分だけを見直す対話が可能になります。
一律の禁止ではなく、個別の調整という発想が現場で生きてきます。
声かけのヒント
子どもとSNSの話をするときは、否定から入らず観察を促す問いかけが効果的です。
たとえば
「どんなときに楽しい気持ちになる?」
と聞いてみるとよいでしょう。
まとめ

SNSが思春期の心に与える影響は、思っていた以上に個人差が大きいことが分かりました。
大切なのは、一律のルールではなく一人ひとりに合わせた関わり方ではないでしょうか。
- SNSの影響は人によって正反対になりうる
- 能動的・受動的という分類だけでは不十分
- 使った後の気分を振り返る習慣が役立つ
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
Social Media Use and Adolescents’ Well-Being: Developing a Typology of Person-Specific Effect Patterns
著者: Ine Beyens, J. Loes Pouwels, Irene I. van Driel, Loes Keijsers, Patti M. Valkenburg(2021年)
DOI: https://doi.org/10.1177/00936502211038196