ゲームは学びの宝庫?ジェームズ・ジー理論を超える新時代の学習論

オーストラリア・メルボルン大学のAlexander Bacalja氏らの研究チームが、2024年に興味深い論文を発表しました。

そのタイトルは

「Postdigital Videogames Literacies: Thinking With, Through, and Beyond James Gee’s Learning Principles」

です。

この論文は、ゲーム研究の古典として知られるジェームズ・ポール・ジー氏の著作を、現代の視点から読み直す試みでした。

ジー氏は2003年に、優れたゲームには

「良い学び」

の36の原則が組み込まれていると論じています。

Bacalja氏、T. Philip Nichols氏、Bradley Robinson氏ら21人の研究者が、その議論をさらに発展させました。

ゲームと学びの関係を新しい時代に合わせて考え直す大規模なプロジェクトです。

本記事では、この研究の内容を、教育現場や家庭で活かせるヒントとして紹介していきます。

 

 

 

論文の概要

 

ゲームを楽しむ子どもたちと学びの様子を表すイメージ

 

研究の対象と目的

 

この研究は、ジー氏の古典的著作を21人の専門家で読み直した論集です。

ジー氏は、優れたゲームには学習を促す仕組みが多く備わっていると指摘しました。

その考えは学校教育を見直す上で大きな影響を与えてきました。

本論文は、その理論をポストデジタル時代に適応させることを目指しています。

 

どのように調べたか

 

研究チームは21本の短い論考を持ち寄り、5つのグループに整理しました。

それぞれの論考は、理論的な考察や実際の事例にもとづいています。

ポストデジタルとは、デジタルが日常に溶け込んだ現在の社会を指す言葉です。

この視点から、ジー氏の主張を批判的に検討する形式が取られました。

 

結果の概要

 

研究全体を通して、技術への過度な期待を問い直す姿勢が示されています。

ゲームが学びを生むという単純な構図では捉えきれない現実が明らかになりました。

子どもや若者を取り巻く環境そのものに目を向ける必要があると言えるでしょう。

 

ポイント

この研究は、ゲームと学びの関係を21人の専門家が多角的に読み解いた論集です。

技術そのものよりも、それを取り巻く社会や文化に目を向ける視点が大切にされました。

 

分かったこと

 

デジタル機器で学ぶ学生の研究風景

 

最も重要な発見

 

最も重要な指摘は、ゲーム自体が学びを生むわけではないという点でした。

学びが生まれるかどうかは、ゲームを取り巻く文脈に大きく左右されます。

誰と一緒にプレイするか、どのような環境かが鍵を握ると報告されています。

つまり、ゲームと人と社会が織りなす関係こそが学びの源なのです。

 

もう一つの注目ポイント

 

ゲームを使えば学習効果が自動的に上がるという見方への疑問も示されました。

教育的効果を期待した宣伝には、慎重な目を向ける必要があると言えるでしょう。

ゲーム企業の意図やビジネスモデルも、学びに影響を及ぼすと考えられます。

教育者や家庭が、批判的にゲームと向き合う姿勢が求められています。

 

意外な結果や副次的な気づき

 

ゲームを通じて、子どもたちが独自の文化を作り出している点も注目されました。

動画配信や攻略情報の共有など、ゲームの周辺にも豊かな学びが広がっています。

こうした活動は、従来の読み書きの力とは異なる新しいリテラシーと言えそうです。

 

  • ゲーム単体ではなく文脈が学びを生む
  • 教育効果を過信せず批判的視点が必要
  • ゲーム周辺の活動にも豊かな学びがある

 

ポイント

ゲームには学びの可能性がある一方で、それを過度に美化するのは危険です。

誰と、どのような環境で、どんな目的で遊ぶのかが、学びの質を決めると分かっています。

 

日常で活かせること

 

家庭で対話する家族の温かい風景

 

ゲーム中の対話を大切にする

 

ゲームをただ与えるだけでは、深い学びにつながりにくいようです。

プレイしている子どもに、何を楽しんでいるのか聞いてみてはどうでしょうか。

家庭や学校で対話の機会を作ると、ゲーム体験が学びへと広がります。

一緒に語り合う時間こそが、学びの質を高める第一歩です。

 

ゲームの裏側にも目を向ける

 

ゲームには企業の意図や広告の仕組みが含まれていることも知っておきましょう。

課金や報酬の仕掛けがどう作られているかを話題にしてみるのもよい方法です。

こうした視点を持つことで、批判的に情報を読み解く力が育ちます。

現場では、メディアリテラシー教育の題材として活用する例も増えてきました。

 

周辺活動を学びの場として認める

 

攻略を調べたり、動画を投稿したりする活動も立派な学びと言えるでしょう。

子どもがゲームから派生して取り組む活動に、温かい目を向けたいところです。

文章を書く、編集する、仲間と協力するなど多様な力が育まれています。

こうした学びを認めることが、新しい時代の教育に求められています。

 

ポイント

ゲームを禁止するのでもなく、無条件に推奨するのでもなく、対話と批判的視点を持って向き合うことが鍵となります。

周辺活動にも学びがあると認める姿勢が大切です。

 

まとめ

 

新しい学びの可能性を象徴する開かれた本

 

ゲームと学びの関係は、単純な善悪では語れないことが分かりました。

大切なのは、技術を取り巻く人や社会に目を向ける視点ではないでしょうか。

 

  • ゲーム単体ではなく文脈が学びを生む
  • 対話と批判的視点を持って向き合う
  • 周辺活動にも豊かな学びがある

 

ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。

 

【参考論文】

Postdigital Videogames Literacies: Thinking With, Through, and Beyond James Gee’s Learning Principles

著者: Alexander Bacalja, T. Philip Nichols, Bradley Robinson, Ibrar Bhatt, Stefan Kucharczyk ほか(2024年)

DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-032-21035-7_5

 

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