自己調整学習を育てる教室とは?教師の関わり方を観察研究から読み解く

近年、変化の激しい社会を生き抜く力として、自分で学びを進める力が注目を集めています。

知識を覚えるだけでなく、学び方そのものを身につけることが重視されてきました。

この力は

「自己調整学習」

と呼ばれ、生涯にわたる学びの土台になると考えられています。

とはいえ、教える側がどう関われば子どもの自己調整学習が育つのか、まだ十分には明らかになっていません。

今回紹介するのは、Charlotte Dignath氏とMarcel V. J. Veenman氏が2020年に発表した論文です。

論文タイトルは

「The Role of Direct Strategy Instruction and Indirect Activation of Self-Regulated Learning」

です。

教室を実際に観察した17本の研究をまとめ、教師の働きかけ方を整理した内容になっています。

学び方を直接教えるか、学びを促す環境を整えるかという二つの軸から、効果的な支援の在り方を考察しています。

家庭でも学校でも応用できる視点が詰まった研究です。

 

 

 

論文の概要

 

教室で学び合う子どもたちの様子

 

研究の対象と目的

 

この論文は、自己調整学習を子どもにどう支援するかをテーマにしています。

自己調整学習とは、目標を立て、計画し、振り返りながら自分の学びを進める力のことです。

大切さは広く知られていますが、教師が実際にどう支えれば良いのかは曖昧でした。

そこで著者らは、教室での実際の様子を観察した研究を集めて分析したのです。

 

どのように調べたか

 

研究の枠組みとして、二つの支援の形が示されました。

一つは 学習方略を直接教える指導 です。

もう一つは、子どもが自ら学びを調整したくなる環境を整える間接的な支援になります。

その上で、教室観察を行った17本の論文をシステマティックに集めて整理しました。

 

  • 分析対象:教室観察を行った研究17本
  • 支援の枠組み:直接的な方略指導と間接的な環境づくり
  • 補足データ:教師や子どもへの自己報告も検討対象

 

結果の概要

 

分析の結果、多くの教室では学習方略の直接指導はほとんど行われていないと報告されています。

一方で、間接的に学習を支える環境を整えている教師もいることが確認されました。

つまり、教え方には大きな個人差が存在していたのです。

 

ポイント

自己調整学習の支援には、学び方を直接教える方法と、学びたくなる環境を整える方法の二つがあります。

17本の観察研究をまとめると、前者は驚くほど少なく、後者を実践する教師が一定数いるという実態が見えてきました。

 

分かったこと

 

学び方を伝える教師と生徒の場面

 

直接指導はとても少ない

 

最大の発見は、学習方略を明示的に教える場面が極めて少なかったことです。

教科書を解説する時間に比べて、学び方そのものを伝える時間は限られていました。

子どもは

「どう学ぶか」

を体系的に教わる機会を持ちにくい状況だと言えそうです。

結果として、自分なりの学習方法を試行錯誤で身につけるしかない場面が多くなります。

 

間接的な支援は確認された

 

もう一つの注目点は、間接的な支援を行う教師の存在です。

子どもが自分で考え、選び、振り返る余白のある授業を設計している事例も見られました。

こうした環境では、子どもは自然と 自分の学びを自分で動かす経験 を積むことができます。

ただ、直接的な方略指導がないと、せっかくの経験が言語化されにくいという課題もあります。

 

  • 直接指導:学び方を言葉でしっかり教える支援
  • 間接支援:選択や振り返りを促す授業設計
  • 両輪が必要:知識と経験を結びつけることが鍵

 

観察だけでは見えない面もある

 

意外な指摘として、教室観察だけでは支援の全容がつかみにくい点が挙げられています。

授業中には見えない働きかけが、子どもの内面では起きているからです。

そのため著者らは、教師や子ども自身への質問紙調査も組み合わせる重要性を強調しました。

複数の視点から支援を捉えることで、より正確な評価ができると考えられます。

 

日常で活かせること

 

振り返りを書き込む子どもの手元

 

学び方を言葉にして伝える

 

子どもに勉強を促すとき、内容だけでなく学び方も言葉で伝えてみましょう。

「分からないところに印をつけてから読み直すといいよ」

のような具体的な助言が役立ちます。

学び方を共有することで、子どもは自分の頭の使い方を意識できるようになります。

これは学校でも家庭でも、すぐに始められる支援ではないでしょうか。

 

選ぶ余白と振り返る時間を作る

 

間接的な支援として、選択肢と振り返りの場を用意することが有効です。

「どの順番で進める?」

「今日はどこが分かった?」

と問いかけてみてはどうでしょうか。

子どもが自分で決め、自分で評価する経験が、自己調整の力を育てます。

小さな選択の積み重ねが、長い目で見ると大きな差につながると考えられます。

 

本人の声に耳を傾ける

 

支援が届いているかは、外から見るだけでは分かりません。

「どんなふうに考えて解いた?」

と本人に尋ねることが、何よりの確認になります。

言葉にすることで、子ども自身も自分の学び方を客観視できるようになるのです。

対話を通じた支援は、教育現場でも家庭でも今日から実践できる方法と言えるでしょう。

 

まとめ

 

光が差し込む机の上の開かれた本

 

自己調整学習を育てるには、学び方を直接教える支援と、学びを促す環境づくりの両方が必要だと分かりました。

観察研究から見えてきたのは、現場では直接指導が不足しているという実態です。

 

  • 学び方そのものを言葉で教える機会を増やす
  • 選択と振り返りの時間を意識的に設ける
  • 本人の声を聞き、支援の届き方を確認する

 

ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。

 

【参考論文】

The Role of Direct Strategy Instruction and Indirect Activation of Self-Regulated Learning—Evidence from Classroom Observation Studies

著者: Charlotte Dignath, Marcel V. J. Veenman(2020年)

DOI: https://doi.org/10.1007/s10648-020-09534-0

 

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