今、スマートフォンを開けば健康の情報があふれています。
ネットには食事や睡眠、心の健康に関する話題が次々と並びます。
ただ、その情報が正しいかどうかを見分けるのは簡単ではありません。
子どもや若者が健康の情報を読み解く力は、どれくらい育っているのでしょうか。
この
「健康の情報を集めて活かす力」
を、専門的には健康リテラシーと呼びます。
情報を読み解く力は、これからの学びに欠かせません
目次
若者の半数が健康情報を読み解けていない

地中海の東側で調べた82の研究
今回手がかりにするのは、研究者のMohammed B A Sarhanさんたちが2023年に発表した調査です。
中東や北アフリカを含む東地中海地域という国々に注目しました。
この地域の10〜25歳を対象にした研究を、幅広く集めて整理しています。
集まった論文は、全部で82本にのぼりました。
イランとトルコに研究が集中
82本の多くは、イランとトルコで行われた研究でした。
その大半は、ある一時点の状態を切り取る横断研究という方法です。
横断研究とは、時間をおって追いかけずに、今の様子を調べるやり方を指します。
手軽に実態をつかめる一方で、原因と結果の関係までは見えにくいという特徴があります。
- 対象:10〜25歳の子どもと若者
- 地域:中東や北アフリカを含む東地中海
- 集めた研究:82本
半数の研究で健康リテラシーが低め
結果を見ると、気になる傾向が浮かび上がってきました。
およそ半数の研究で、若者の半分以上が健康リテラシーは低いか中くらいでした。
若者の半分以上が健康情報を十分に使いこなせていない
これは一部の国だけの話ではないと考えられます。
ポイント
健康リテラシーとは、健康の情報を集めて理解し、暮らしに活かす力のことです。
難民や障害のある子どもが見過ごされてきた

弱い立場の子どもへの調査が少ない
この総まとめから、もう一つ大切な事実が明らかになりました。
難民や障害のある子ども、暴力にさらされた若者への調査は、ほとんど見当たりませんでした。
こうした子どもたちこそ、健康の情報から遠ざかりやすい存在です。
支援が必要な人ほど届いていない現実が見えてきます。
食事や心の健康など幅広いテーマ
調べられたテーマは、実にさまざまでした。
食事や栄養、生活習慣病、メディアとの付き合い方などが並びます。
心の落ち込み、つまり抑うつを扱った研究もありました。
健康リテラシーが、体だけでなく心にも関わると分かります。
- 食事や栄養に関する知識
- 生活習慣病の予防
- メディアや情報との付き合い方
- 心の健康や抑うつ
ネットの使い方が力を左右する
健康リテラシーの高さには、いくつかの要因が関わっていました。
年齢や家庭の経済状況といった背景が影響すると報告されています。
さらに、インターネットの使い方も大きく関わっていたようです。
ネットとの付き合い方が健康リテラシーを左右する
ネットを上手に使う若者ほど、健康の情報を活かせる傾向が見られました。
ポイント
支援が必要な子どもほど、健康の情報から取り残されやすい傾向があります。
学校とネットで健康リテラシーを育てる

学校での健康教育を活かす
研究では、力を伸ばす取り組みも紹介されました。
学校や大学での健康教育が、健康リテラシーを高めたと報告されています。
授業で情報の読み解き方を学ぶ機会は、家庭でも応用できます。
身近な話題から、情報の正しさを一緒に考えてみましょう。
SNSを味方につける
若者に届けるなら、SNSの活用が鍵になりそうです。
研究チームも、社会的なメディアを通した発信をすすめています。
禁止より、賢い使い方を一緒に育てる姿勢が大切です
信頼できる発信元を見分ける習慣を、少しずつ育ててみてはどうでしょうか。
相関であって因果ではない点に注意
ここで一つ、正直にお伝えしたい点があります。
今回の多くは、関係の有無を示す横断研究でした。
ネットの使い方と健康リテラシーの関係は、相関であって因果とは言い切れません。
それでも、読む力や言葉の力を育てる意味は大きいと考えられます。
本や記事を一緒に読み、内容を話し合う時間が土台になります。
ポイント
情報を読み解く力は、読書や対話を通して家庭でも育てられます。
まとめ

東地中海地域の若者を調べた82本の研究を紹介しました。
半数の研究で、健康リテラシーが低めだと示されています。
難民や障害のある子どもへの目配りも、課題として残りました。
- 若者の半分以上が健康情報を使いこなせていない
- ネットの使い方や家庭の背景が力に関わる
- 学校とSNSを通じて読む力を育てられる
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
Health literacy among adolescents and young adults in the Eastern Mediterranean region: a scoping review
著者: Mohammed B A Sarhan, Rika Fujiya, Junko Kiriya, Zin Wai Htay, Kayono Nakajima ほか(2023年)
DOI: https://doi.org/10.1136/bmjopen-2023-072787