子どもに厳しく接することが、将来の自立や心の強さにつながる。
多くの人が、そう信じてきたのではないでしょうか。
ところが、親の厳しさが心の育ちに役立つとは限らないようです。
むしろ温かく接するほど大人の幸福感が高まる。
――そんな研究結果が明らかになりました。
目次
温かい関わりが心の育ちを支える

三世代871人を調べた研究
今回手がかりにするのは、研究者のÓscar F. Garcíaさんたちが2020年に発表した調査です。
スペインの家族を、祖父母から孫まで三世代にわたって調べています。
世代が新しいほど、親は愛情を多く示す傾向がありました。
反対に、体罰や叱責といった厳しさは減ってきています。
- 対象:スペインの三世代家族
- 参加者:871人(学生・親・祖父母)
- 調べたこと:子育ての関わり方と心の健やかさ
温かさが幸福感につながった
研究では、親の関わりを大きく二つの面から見ています。
一つは愛情や対話といった、温かさの面です。
もう一つは罰や叱責といった、厳しさの面でした。
その結果、温かい関わりを受けた人ほど幸福感が高いと示されました。
人生への満足度や自尊心の高さにもつながっています。
厳しさは効果が見えなかった
一方で、厳しさのほうはどうだったのでしょうか。
子どもの特権を取り上げる、強く叱る、体罰といった関わりです。
これらが心の育ちを支えるとは、確認されませんでした。
厳しさが自立を高めるという証拠は、見当たりませんでした。
ポイント
厳しさよりも、温かい関わりが心の健やかさを支えると分かってきました。
4つの子育てタイプで何が違う?

子育ては温かさと厳しさで分かれる
この研究では、子育てを4つのタイプに整理しています。
温かさと厳しさ、二つの軸を組み合わせた分け方です。
- 権威型:温かく、かつ厳しい
- 共感型:温かいが、厳しくない
- 厳格型:厳しいが、温かくない
- 放任型:厳しくも温かくもない
共感型が権威型と同等以上
ここで興味深いのは、共感型の結果でした。
温かいけれど厳しくしない、という関わり方です。
この共感型が、権威型と同じかそれ以上に良い結果を示しました。
自尊心の高さでも、幸福感でも引けを取りません。
厳しさを加えなくても、子どもは健やかに育つようです。
冷たい関わりは低い結果に
逆に、成績が振るわなかったのはどのタイプでしょうか。
厳格型と放任型、つまり温かさに欠ける関わりでした。
どちらも自尊心や幸福感が、低くなる傾向が報告されています。
厳しさの有無よりも、温かさの有無が大きいと言えそうです。
ポイント
子どもの育ちを分けるのは、厳しさよりも温かさの有無だと考えられます。
家庭や学校で活かすには

まず気持ちに耳を傾ける
研究が示すのは、温かさの持つ力の大きさでした。
子どもが話すとき、まずは耳を傾けてみましょう。
気持ちを受け止める姿勢が、安心感を育てます。
家庭でも学校でも、今日から始められる関わりです。
叱るより理由を伝える
厳しく叱るだけでは、心の育ちにつながりにくいようです。
頭ごなしに罰するのではなく、理由を言葉で伝える関わりが役立ちます。
なぜ良くないのかを対話で共有してみてはどうでしょうか。
納得を通して、子どもは自分で考える力を身につけます。
相関であり因果ではない点に注意
ただし、ここで一つ大切な注意があります。
この研究は関わり方と心の状態の関連を示したものです。
温かさが幸福を生んだと、断定できるわけではありません。
それでも、温かい関わりを心がける価値は十分にあるでしょう。
ポイント
叱るよりも聞く姿勢を、罰するよりも理由を伝える関わりを意識してみてください。
まとめ

厳しさが子どもを育てるという考えは、見直す時期に来ているのかもしれません。
三世代を追ったこの研究は、温かさが子どもの一生を支えると教えてくれます。
- 温かい関わりが幸福感と自尊心を支える
- 共感型は権威型と同等以上の良い結果
- 温かさに欠ける関わりは低い結果に
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
Parenting Warmth and Strictness across Three Generations: Parenting Styles and Psychosocial Adjustment
著者: Óscar F. García, María C. Fuentes, Enrique Gracia, Emilia Serra Desfilis, José Fernando García Pérez(2020年)
DOI: https://doi.org/10.3390/ijerph17207487