数学の勉強でつまずいた経験はありませんか。
数式や記号を前に、頭が真っ白になることもあります。
実はその理解には、体の動きが深く関わっています。
指を動かしたり、手で形を描いたりする経験です。
そんな
「体で学ぶ数学」
に、今大きな関心が集まっています。
目次
数学は体の動きから理解が生まれる

動きが理解を生む身体を使った学び
今回手がかりにするのは、研究者のDor Abrahamsonさんたちが2020年に発表した論文です。
認知科学と教育の専門家が集まってまとめた総説でした。
中心にあるのは
「身体化された認知」
という考え方です。
これは思考が体の感覚や動きと結びついているという見方を指します。
学びは体の経験から立ち上がるという発想が土台にあります。
まず動いてから言葉にする順番
これまでの授業では、先に公式や言葉を教えるのが普通でした。
ところがこの研究が示す順番は、むしろ逆になります。
先に体を動かし、後からその意味を言葉で整えていきます。
動きの経験そのものが、概念の土台になると考えられます。
両手の動きが比の感覚を育てる
たとえば、両手を上下に動かす学習課題があります。
画面の高さに合わせて手の位置を調整する活動です。
この動きから比や割合の感覚が芽生えると報告されています。
言葉で教わる前に、体が先に分かっていくようです。
ポイント
数学の概念は、抽象的な記号だけで身につくものではありません。
体を動かす経験が、理解の入り口になるという視点が見えてきます。
視線や身振りに理解の芽が見える

体の動きを丸ごと記録する研究法
この論文には、もう一つ面白い側面があります。
子どもの学びをどう測るかという工夫です。
使われるのは
「マルチモーダル学習分析」
という手法でした。
複数の情報をまとめて捉える新しい技術です。
手の動き・視線・言葉を同時に捉える
研究者が記録するのは、体の動きだけではありません。
- 手や体の動き
- 目の動き(どこを見ているか)
- 言葉と身振りのつぶやき
これらを重ね合わせると、理解の芽が浮かび上がります。
見えにくい思考を動きから読み取るという試みです。
言葉より先に視線が答えを見つける
とりわけ興味深いのは、視線の動きでした。
正解を口にする前に、目が先に答えを追うことがあります。
理解は言葉になる前から始まっているのかもしれません。
これは学びの見方を広げてくれる発見ではないでしょうか。
ポイント
子どもが黙っていても、理解が進んでいないとは限りません。
視線や手の動きに、考えの芽が表れていることがあります。
体を使う学びを家庭や学校で活かす

手を動かしながら説明してみる
まず気軽にできるのは、手を使った説明です。
大きさや量を、手の広げ方で表してみましょう。
言葉だけより、体の感覚と結びつきやすくなります。
身振りを交えるだけでも学びは変わってきます。
タブレットやアプリを動きと組み合わせる
画面を指でなぞる学習アプリも役立ちます。
図形を動かしたり、線を引いたりする操作です。
操作した感覚が、概念の理解を後押しします。
ただ眺めるより、触れて動かす活動を選びたいところです。
まず体験してから言葉にする
順番を意識するのも大切な工夫です。
先に体で試し、後から言葉でまとめてみてはどうでしょうか。
この研究は多くの実践をまとめた総説である点に注意が必要です。
効果は学ぶ内容や場面によって変わると考えられます。
それでも、動きを学びに取り入れる価値は十分にありそうです。
ポイント
特別な道具がなくても、手や体はいつでも使えます。
動いてから言葉にするという順番を、今日から試せます。
まとめ

数学の理解は、体の動きと深く結びついています。
動きから生まれる感覚が、概念の土台を支えます。
視線や身振りには、言葉になる前の思考が表れます。
- 数学の理解は体の動きから芽生える
- 視線や身振りに理解の芽が表れる
- まず体験し、後から言葉にする
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
The Future of Embodied Design for Mathematics Teaching and Learning
著者: Dor Abrahamson, Mitchell J. Nathan, Caroline Williams, Candace Walkington, Erin Ottmar ほか(2020年)
DOI: https://doi.org/10.3389/feduc.2020.00147