電子たばこを使う10代が、世界的に増えていると報告されています。
調査によっては、高校生の2割前後が経験したという数字も見られます。
思春期は好奇心が強く、新しい刺激を求めやすい年ごろです。
その一方で、脳はまだ発達の途中にあります。
お酒やたばこ、大麻が脳にどう影響するのか、気になる人は多いのではないでしょうか。
この時期の物質使用は、心や学びに影を落とす可能性が指摘されています。
目次
思春期の脳が物質使用に弱い理由

まだ育ち続ける10代の脳
思春期の脳は、大人と同じように見えても発達の途中です。
今回手がかりにするのは、研究者のShahnaza Hamidullahさんたちが2020年に発表した総説です。
この論文は、思春期の物質使用と脳の関係を、多くの調査から整理しています。
感情や欲求を担う部分は早く育つ一方、抑制を担う前頭前野はゆっくり育つと分かっています。
だからこそ思春期は物質の影響を受けやすいと考えられます。
報酬を強く感じやすい時期
10代は、報酬に強く反応しやすい時期です。
ここでの報酬とは、嬉しい・楽しいと感じる刺激を指します。
快感を強く覚えるほど、その行動を繰り返したくなります。
お酒やたばこの刺激も、より鮮明に記憶へ残りやすいようです。
好奇心と衝動性という特徴
新しい体験を求める気持ちも、この時期に高まります。
好奇心は成長に欠かせない力ですが、時にリスクへも向かわせます。
その場の勢いで試してしまう危うさも、あわせ持つのが特徴でしょう。
これは思春期ならではの自然な変化だと言えます。
ポイント
思春期の脳は、快感を求める力が先に育ち、抑える力は後から育ちます。
このアンバランスが、物質使用への弱さにつながると考えられています。
物質使用は学びと心にどう響くか

次に、物質使用が何と関わるのかを見ていきます。
研究で注目された主な物質は、次の三つです。
- お酒(アルコール)
- 大麻(カンナビス)
- ニコチン(たばこ・電子たばこ)
記憶や集中力が揺らぐ可能性
物質使用は、記憶や集中力と関わると報告されています。
とくに大麻の使用と記憶力の低下との関連が指摘されました。
お酒の早い時期からの使用も、脳の働きに影響しうるようです。
学びの土台となる力が揺らぐのは、見過ごせない点ではないでしょうか。
不安やうつとのつながり
物質使用は、心の健康とも結びついていました。
使用する若者ほど、不安やうつを抱えやすい傾向が示されています。
脳の画像研究でも、感情に関わる領域の違いが確認されました。
心の不調と物質使用は、たがいに影響し合う関係と考えられます。
相関の読み取りは難しい
ここで注意したい点があります。
多くの研究は、物質使用と脳の状態の関連を調べたものです。
もともとの脳の特徴が、使用のしやすさを生んだ可能性も残ります。
どちらが原因かを見分けるのは、とても難しいのが実情です。
ポイント
思春期の物質使用は、記憶・集中力・心の健康と関連が見られました。
ただし関連が見つかっても、原因と結果を確定できるわけではありません。
家庭や学校で今日からできること

頭ごなしより対話を大切に
子どもの物質使用を防ぐには、日ごろの関わりが土台になります。
頭ごなしに叱るだけでは、かえって心を閉ざしてしまいがちです。
まずは気持ちや事情に耳を傾けてみましょう。
安心して話せる関係が予防の土台になります。
打ち込めるものを一緒に探す
思春期の強い好奇心は、良い方向へも生かせます。
スポーツや趣味など、夢中になれる活動を一緒に探してみてはどうでしょうか。
健全な刺激で満たされていれば、危険な誘いへの魅力は薄れます。
打ち込める何かを持つことが、心の安定にもつながります。
相関と因果を混同しない
最後に、研究結果の受け止め方にも触れておきます。
今回の知見の多くは、あくまで関連を示したものです。
物質使用が必ず脳を変えると決めつけるのは、正確ではありません。
だからこそ、過度に恐れず、事実を冷静に伝えたいところです。
ポイント
大切なのは、禁止の言葉より、信頼と対話を積み重ねることです。
子どもが安心して相談できる環境が、何よりの予防になります。
まとめ

思春期は、脳が育つ途中の大切な時期です。
その特徴ゆえに、物質使用の影響を受けやすいと分かってきました。
- 思春期の脳は快感に敏感で、抑える力は発達の途中
- 物質使用は記憶・集中力・心の健康と関連する
- 多くは相関であり、因果とは言い切れない
数字に驚くだけでなく、背景を知ることが第一歩になります。
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
Adolescent Substance Use and the Brain: Behavioral, Cognitive and Neuroimaging Correlates
著者: Shahnaza Hamidullah, Hayley H. A. Thorpe, Jude A. Frie, Richard D. McCurdy, Jibran Y. Khokhar(2020年)
DOI: https://doi.org/10.3389/fnhum.2020.00298