ドイツのマインツ大学などの研究チームが、注目すべき論文を発表しました。
筆頭著者のChristian Schemer氏らが2020年に公開した研究です。
原題は
「The Impact of Internet and Social Media Use on Well-Being」
です。
日本語にすると
「ネットとSNSの利用が幸福感に与える影響」
となります。
この研究は、思春期の子どもを9年間も追いかけた珍しい調査でした。
気になるのは、その結論ではないでしょうか。
ネットやSNSの利用は心の健康とほとんど関係していなかったのです。
「スマホが心を蝕む」
という不安が広がる今、見逃せない発見と言えるでしょう。
目次
論文の概要

まずは研究の全体像から見ていきましょう。
研究の対象と目的
調査の対象は、ドイツに住む思春期の子どもたちでした。
研究の狙いは、ネット利用と幸福感の関係を探ることにあります。
ここでいう幸福感とは、心の満足度を指します。
具体的には、気分の落ち込みやすさと人生への満足度で測りました。
どのように調べたか
この研究の最大の特徴は、調査期間の長さにあります。
なんと約9年間にわたって、同じ人たちを追跡し続けました。
その間に、合計5回も繰り返し質問を重ねています。
これだけ長く追った調査は、世界的にも貴重なものと言えるでしょう。
- 対象:ドイツの思春期の子どもたち
- 期間:約9年間の長期追跡
- 調査回数:合計5回のパネル調査
結果の概要
導き出された結論は、とてもシンプルでした。
ネットやSNSの利用頻度と幸福感の関係は、ほぼゼロ。
研究チームは、テレビ視聴や自己肯定感の影響も同時に考慮しています。
それでも、結論はまったく揺らがなかったと報告されています。
ポイント
9年という長い時間をかけても、ネット利用と心の健康のあいだに目立つつながりは見つかりませんでした。
分かったこと

ここからは、具体的な発見を見ていきます。
最も重要な発見
一番の発見は、影響の小ささそのものでした。
ネット利用の頻度は、幸福感をほとんど左右しません。
SNSの利用についても、結果はまったく同じでした。
利用が多い人と少ない人で心の状態に差はほぼなかったと示されています。
もう一つの注目ポイント
研究では、比較のためにテレビ視聴も調べています。
テレビをよく見る人は、人生満足度がやや低めでした。
とはいえ、その差はごくわずかなものです。
実生活で気にするほどの大きさではないと考えられます。
意外な結果や副次的な気づき
研究チームは、一人ひとりの中の変化にも注目しました。
同じ人がネット利用を増やしても、幸福感は変わらなかったようです。
自己肯定感や友人との関係を考えに入れても、結論は同じでした。
- ネット利用と幸福感の関連はほぼゼロ
- SNS利用も心の健康に影響しない
- テレビ視聴の影響もごく小さい
ポイント
メディアの利用そのものより、その使い方や周りの環境のほうが心に影響すると読み解けます。
日常で活かせること

この研究の知見は、毎日の暮らしにも役立ちます。
利用時間だけで判断しない
つい、利用時間の長さばかりに目が向きがちです。
けれど研究は、時間と心の健康がほぼ無関係だと示しました。
大切なのは、何にどう使っているかという中身ではないでしょうか。
時間を数えるより、画面の向こうの過ごし方に目を向けてみましょう。
不安を煽る情報と距離を置く
「スマホが心を壊す」
といった見出しをよく見かけます。
こうした言葉は、強い不安を生みやすいものです。
今回の研究は、その不安が大げさかもしれないと教えてくれます。
過激な情報に振り回されず、落ち着いて向き合いたいところです。
本当に大切な要素に目を向ける
研究では、自己肯定感や友人関係も一緒に調べていました。
これらは、幸福感としっかり結びついていたのです。
ネットへの心配より、自信や人とのつながりを育てたいところです。
家庭や学校で、そうした土台を支えてみてはどうでしょうか。
ポイント
画面の利用時間を制限することより、自信や友人関係といった心の支えを育てることが効果的です。
まとめ

9年という長い追跡から、意外な事実が見えてきました。
ネットやSNSの利用は、思春期の心とほとんど関係していなかったのです。
- ネット・SNS利用と心の健康の関連はほぼゼロ
- 利用時間より使い方や中身に目を向ける
- 自己肯定感や友人関係こそが心を支える
不安に流されず、本当に大切なものを見つめ直したいところです。
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
The Impact of Internet and Social Media Use on Well-Being: A Longitudinal Analysis of Adolescents Across Nine Years
著者: Christian Schemer, Philipp K. Masur, Stefan Geiß, Philipp Müller, Svenja Schäfer(2020年)
DOI: https://doi.org/10.1093/jcmc/zmaa014