子どもの肥満は、単なる食べ過ぎだけが原因ではありません。
生活習慣や環境、体の仕組みまで、いくつもの要素が絡み合っています。
しかも幼い頃の体の変化が、思春期や大人の肥満につながることも分かってきました。
放っておくと、糖尿病や睡眠時無呼吸まで招く場合があります。
――そんな研究結果が明らかになりました。
目次
子どもの肥満はなぜ起きるのか

今回手がかりにするのは、研究者のAlvina R. Kansraさんたちが2021年に発表した総説です。
子どもと思春期の肥満について、原因から治療までを幅広く整理しています。
エネルギーの偏りとは何か
肥満の最も多い原因は、エネルギーの偏りだと報告されています。
これは食べて取り込む量と、動いて使う量の差を指します。
取り込む量が使う量を上回ると、余った分が脂肪としてたまっていきます。
食べ過ぎと運動不足が重なると肥満に傾きます。
幼児期の脂肪の再増加に注意
興味深いのは、幼い頃の体の変化です。
子どもの体脂肪は、いったん減ってから再び増える時期があります。
この再び増える現象は、脂肪の再増加(Adiposity Rebound)と呼ばれています。
これが早く始まる子ほど、将来の肥満につながりやすいと分かっています。
遺伝や環境も関わっている
肥満は、本人の努力不足だけで決まるわけではありません。
遺伝や発達、周りの環境や習慣まで、幅広く関わっています。
つまり、複数の要因が重なって生まれる状態だと言えるでしょう。
ポイント
肥満は食べ過ぎだけでなく、体質や環境も絡む複雑な状態です。
肥満と睡眠時無呼吸の深い関係

大人の病気が子どもにも広がる
肥満が増えると、体にはさまざまな影響が出てきます。
かつては大人の病気とされたものが、子どもにも見られるようになりました。
2型糖尿病や高血圧、脂質異常症などがその例です。
肝臓に脂肪がたまる非アルコール性脂肪肝(NAFLD)も挙げられています。
見過ごせない睡眠時無呼吸
睡眠との関わりで注目したいのが、睡眠時無呼吸(OSA)です。
これは眠っている間に、呼吸が何度も止まる状態を指します。
肥満は、この睡眠時無呼吸を起こしやすくすると報告されています。
睡眠の質が下がると日中の集中力にも響きます。
学びや生活の土台として、睡眠は見過ごせない要素ではないでしょうか。
体型の悩みと摂食障害
肥満は、体だけでなく心にも影響します。
思春期は、体型への悩みが強くなりやすい時期です。
無理な食事制限が、かえって摂食障害を招く場合があります。
過食症や神経性やせ症などが、その一例として知られています。
- 2型糖尿病(血糖の調整がうまくいかない)
- 高血圧(血管に負担がかかる)
- 睡眠時無呼吸(眠りが浅くなる)
- 脂肪肝や脂質異常症(内臓への負担)
ポイント
肥満は睡眠や心の健康にも影を落とすため、早めの気づきが大切です。
家庭や学校でできる予防の工夫

ここからは、日々の暮らしで活かせる視点を見ていきましょう。
制限より一緒に楽しむ食事
やせさせようと厳しく制限するのは、逆効果になりがちです。
無理な制限は、心の負担や摂食障害につながることもあります。
まずは食事そのものを、一緒に楽しむ工夫をしてみましょう。
野菜や水を身近に置くだけでも、選び方は変わってきます。
体を動かす習慣をつくる
使うエネルギーを増やすには、体を動かす習慣が役立ちます。
特別な運動でなくても、歩く時間を増やすだけで十分です。
歩く時間を増やすだけでも効果があります。
画面を見る時間を少し減らす工夫も試してみてはどうでしょうか。
体型への言葉かけに配慮する
体型をからかう言葉は、子どもの心を深く傷つけます。
周りの何気ない一言が、無理な食事制限の引き金になりかねません。
体重そのものより、健康的な習慣に目を向けたいところです。
なお、脂肪の再増加はあくまで将来のリスクを高める要因の一つです。
早いから必ず肥満になるわけではない点も、覚えておきたい事実。
ポイント
体重を責めるのではなく、楽しい食事と運動を一緒に育てていきましょう。
まとめ

子どもの肥満は、複数の要因が絡み合う複雑な状態でした。
体の病気だけでなく、睡眠や心の健康にも関わってきます。
- 肥満の主な原因はエネルギーの偏り
- 睡眠時無呼吸や生活習慣病のリスクが高まる
- 制限より楽しい食事と運動が予防の鍵
体重を責めるより、健やかな習慣を一緒に育てていきたいものです。
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
Childhood and Adolescent Obesity: A Review
著者: Alvina R. Kansra, Sinduja Lakkunarajah, M. Susan Jay(2021年)
DOI: https://doi.org/10.3389/fped.2020.581461