世界のインターネット利用者の3人に1人は、18歳未満の子どもだと言われています。
音声アシスタントや動画のおすすめ機能など、AI(人工知能)は幼い子どもの毎日にも入り込みました。
とはいえ、AIの仕組みを幼児にどう伝えればよいのか、迷ってしまう人は多いのではないでしょうか。
実はこの難問に、なぜ・何を・どのように教えるかという3つの問いで答えた研究があります。
今回はその内容を、家庭や園ですぐ活かせる形で解説します。
目次
幼児にAI教育が必要な理由とは

まずは幼児期からAIを学ぶ意味と、研究の背景を確認していきます。
AI教育を3つの問いで整理した研究
手がかりにするのは、研究者のWeipeng Yangさんが2022年に発表した論文です。
教育とAIの専門誌に掲載され、幼児向けAI教育のカリキュラム設計の考え方が報告されています。
なぜ・何を・どのように教えるか、という3つの問いに沿って議論が整理されました。
AIリテラシーは全員の基礎教養
論文の答えの一つが、AIを理解して使いこなす力、いわゆるAIリテラシーの重要性です。
この力は、デジタル社会を生きる全ての市民に必要な基礎教養と位置づけられています。
読み書きや計算と同じように、幼児期から少しずつ育てられると考えられます。
幼児の毎日にAIはすでにある
おすすめ動画や音声アシスタントなど、幼児は毎日のようにAIに触れています。
仕組みを知らないまま使い続けるのは、少し不安ではないでしょうか。
だからこそ、生活と結びついた早い時期からの学びが望まれます。
ポイント
AI教育は一部の子どものための英才教育ではありません。
全ての子どもが身につけたい、デジタル時代の読み書きにあたる力として提案されています。
幼児が学べるAIの核心はデータ

次に子どもと探れるAIの中身と、学び方のヒントを見ていきましょう。
大量のデータがAIを賢くする
論文が示す核心の知識は、次の流れにまとめられます。
- AIは大量のデータを取り込んで学習する
- データの中からパターンを見つける
- パターンをもとに予測し、行動をおすすめする
この流れが分かると、おすすめ動画が出てくる理由も子どもに説明できます。
幼児でも、遊びを通じてこの感覚をつかめると述べられています。
AIにも間違いや限界がある
もう一つ強調されているのが、AIには限界があるという視点です。
取り込むデータが偏れば、AIの答えも同じように偏ってしまいます。
万能ではないと知ることが、上手な付き合い方の第一歩と言えるでしょう。
作りながら学ぶと理解が深まる
学び方としては、作りながら学ぶ考え方(learning-by-making)が提案されました。
知識を教え込むのではなく、手を動かす体験からAIの発想に触れていきます。
また、人との関わりを学びの土台とする考え方(pedagogy-as-relational)も重視されています。
ポイント
幼児に伝えたい核心は一つの流れに集約されます。
データで学び、パターンを見つけ、予測してすすめる、ただし限界もある、という理解です。
家庭や園でAI教育を始める工夫

ここからは今日から試せる具体策を3つ紹介します。
身近なAIを一緒に探してみる
まずは生活の中に隠れているAIを、子どもと一緒に探してみましょう。
おすすめ動画や翻訳アプリ、お掃除ロボットなど、題材は身の回りにあふれています。
なぜこの動画が出てきたのだろう、と問いかけるだけでも立派な入り口です。
体を動かしてAIになりきる遊び
論文では、体を使った学び(embodied approach)が勧められています。
例えば子どもがロボット役になり、指示どおりに動く遊びが考えられます。
絵カードを仕分ける遊びなら、データからパターンを見つける感覚を体験できます。
文化や生活に合った題材を選ぶ
教材は子どもの文化や暮らしになじむものが良いとされています。
論文で紹介されたカリキュラムのAI for Kidsも、生活に根ざした探究を大切にしていました。
なお、この論文は理論と提案が中心で、効果の詳しい検証はこれからの課題です。
その点を踏まえつつ、無理のない範囲で試してみてはどうでしょうか。
ポイント
特別な機材がなくても、AI教育は問いかけと遊びから始められます。
まずは身近なおすすめ機能を、家庭や園での会話の題材にしてみましょう。
まとめ

AIを学ぶことは、デジタル社会を生きる全ての人の基礎教養になりつつあります。
幼児期でも、遊びや対話を通じて十分に始められると示されました。
- AIリテラシーは全員に必要なデジタル時代の基礎教養
- 核心はデータから学び予測する流れと、その限界を知ること
- 体を使った遊びと身近な問いかけが学びの入り口
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
Artificial Intelligence education for young children: Why, what, and how in curriculum design and implementation
著者:Weipeng Yang(2022年)
DOI:https://doi.org/10.1016/j.caeai.2022.100061