足元に広がる土について、学校でじっくり学んだ記憶はあるでしょうか。
世界43か国の教科書と授業を調べた結果、土の教育は多くの国で不足していると分かりました。
特に土を選択科目でしか扱わない国ほど、学びの穴が大きいという結果でした。
また紙の教科書とデジタル教材を組み合わせた国は、土の理解が大きく伸びていたと報告されています。
――そんな研究結果が明らかになりました。
目次
土の教育が世界で不足する理由

まずは土の教育がなぜ大切なのかと、調査で見えた不足の実態を見ていきます。
なぜ土の教育が大切なのか
本題の前に、研究チームが前提として挙げた土の大切さに触れておきます。
論文の冒頭によると、土は暮らしや食べ物を支える大切な資源なのに、その役割は世間に十分知られていません。
しかも世界の土壌資源は、いま深刻な脅威にさらされていると論文は述べています。
それでも社会の関心は薄いままで、研究チームはこの無関心こそを課題と見ています。
一方で今の生徒たちは、将来の土地の持ち主や農業の担い手、物事を決める側になる世代です。
だからこそ学校での土の学びが、社会の無関心を変える入り口になると論文は位置づけました。
43か国の教科書を比べた調査
今回手がかりにするのは、Przemysław Charzyńskiさんたちが2022年に発表した国際調査です。
学術誌Geodermaに掲載され、世界人口の約62%を占める国々を調べています。
各国の教科書に土の内容がどれだけ載っているかを比べ、先生への聞き取りも行いました。
- 対象:世界43か国の高校・中等教育
- 範囲:世界人口の約62%をカバー
- 方法:教科書の分析と教員への聞き取り
選択科目の国ほど学びに穴
分析の結果、土の学びが不足しやすいのは、土を必修として扱わない国だと示されました。
選択科目や任意の内容にとどまる国では、生徒が土に触れる機会そのものが減ってしまいます。
土の教育は世界的に見て手薄になっているというのが、この調査の大きな結論です。
土は地理や環境の授業の一部
また多くの国で、土は独立した科目ではなく地理や環境科学の一部として扱われていました。
そのため国ごとの教え方の差が大きく、内容のばらつきも目立つという結果でした。
土だけを深く学ぶ時間は、世界のどこでも少ないのかもしれません。
ポイント
土を必修で教えない国ほど学びの穴が大きいと、今回の調査で報告されています。
土の学びを測る新指標SIC

ここでは学びの量を測る工夫と、デジタル活用の効果を紹介します。
土壌情報係数という物差し
研究チームは各国を比べるため、新しい指標を作りました。
それが土壌情報係数(Soil Information Coefficient)と呼ばれる数値です。
教科書に含まれる土の内容を数値化し、国どうしを比べられるようにした工夫と言えるでしょう。
学びの量を見える化した点は、教育研究として興味深い点ではないでしょうか。
デジタル併用で成果が上がった
この指標で比べると、成果の高い国には共通点がありました。
紙の教科書とデジタル教材を組み合わせた国ほど、成果が高いと示されました。
紙の知識だけでなく、映像やアプリで体感的に学ぶ工夫が効いていると考えられます。
先生への聞き取りで見えた現場
先生たちへの聞き取りからは、授業時間や教材の不足という悩みも浮かびました。
統計的な分類でも、国ごとの教育システムの違いはかなり大きいという結果でした。
制度の差を埋めるには、現場の工夫だけに頼らない仕組みづくりが求められます。
ポイント
教科書だけに頼らず、デジタル教材を組み合わせる方法が成果を高めていました。
家庭や学校で土に親しむ工夫

最後に今日からできる実践のヒントを三つ紹介します。
まずは土に触れる体験から
研究チームは野外活動や実習の重要性を強調しています。
庭やプランターで野菜を育て、土の色や手触りを観察してみましょう。
散歩の途中で場所ごとの土の違いを見比べるだけでも、立派な観察学習になります。
体験を通した気づきは、教科書の知識を記憶に残る学びへ変えてくれます。
大学や地域の専門家とつながる
論文では高校と大学の連携も、有効な打ち手として挙げられました。
地域の博物館や農業体験のイベントは、専門家の話を聞ける貴重な機会です。
学校では出前授業を依頼するなど、外部の力を借りる工夫も役立ちます。
デジタル教材で興味を広げる
土の断面図や世界の土壌地図は、インターネットで手軽に見られます。
動画やアプリを入り口にすれば、苦手意識のある人でも学びやすいでしょう。
なお今回の調査は各国の現状を比べたもので、因果関係を証明した研究ではありません。
とはいえ体験とデジタルの合わせ技が有望な方向だという点は、十分参考になるはずです。
ポイント
土に触れる体験は特別な道具がなくても始められ、身近な庭や公園が教室になります。
まとめ

世界43か国の調査から、土の教育が世界的に不足している現状が見えてきました。
それでも体験やデジタルを組み合わせれば、学びは大きく変えられそうです。
- 土の教育は世界43か国の多くで不足気味
- 紙の教科書とデジタル教材の併用が成果を高める
- 体験活動や大学との連携が次の一手
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
A global perspective on soil science education at third educational level; knowledge, practice, skills and challenges
著者: Przemysław Charzyński, Magdalena Urbańska, Gian Franco Capra, Antonio Ganga, Peter Holmes ほか(2022年)
DOI: https://doi.org/10.1016/j.geoderma.2022.116053