STEM教育とは何を学ぶこと?日本の教科の原理から見えた4分野のつながり

STEM教育という言葉を、学校や習い事の案内で目にする機会が増えてきました。

とはいえ理科や算数と何が違うのか、はっきり説明できる人は少ないのではないでしょうか。

実は専門家の間でも、定義が曖昧なまま実践が広がってきたという課題が指摘されています。

今回は日本の教科の原理からSTEMを捉え直した研究をもとに、4つの分野のつながりを分かりやすく解説します。

 

 

 

STEM教育とは?4分野の役割を整理

 

理科の実験に取り組む子どもたちの様子

 

まずはSTEMという言葉の意味と、研究が生まれた背景を確認していきます。

 

科学・技術・工学・数学の頭文字

 

STEMとは4つの分野の頭文字を並べた言葉です。

具体的には科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)を指しています。

4分野を結びつけながら、実社会の問題を解決する力を育てる教育として世界中で注目を集めてきました。

今回手がかりにするのは、研究者のChikahiko Yataさんたちが2020年に国際誌で発表した論文です。

 

定義が曖昧なまま実践が先行していた

 

論文によるとSTEM教育は、明確な定義や方法がないまま実践や研究が進められてきたそうです。

特に技術と工学が何を担うのかは、これまであまり整理されてきませんでした。

理科と数学の寄せ集めのように扱われ、ものづくりの視点が抜け落ちやすいという問題があったと言えるでしょう。

 

日本の教科が持つ見方・考え方に注目

 

そこで研究チームは日本の学習指導要領に示された、各教科の見方・考え方に着目しました。

学習指導要領とは、国が定める教育課程の基準のことを指します。

理科・技術・数学のそれぞれには、対象を捉える独自の視点と思考のスタイルがあると整理されています。

 

ポイント

STEM教育の曖昧さを解消するため、日本の教科の原理という足場から枠組みを組み立て直したのが本研究の特徴です。

 

エンジニアリングが学びをつなぐ鍵

 

設計図とブロックでものづくりをする場面

 

次に工学の位置づけと、4分野の関係を見ていきましょう。

 

日本・アメリカ・イギリスの定義を比較

 

日本の学校には工学という教科がないため、その概念をどう扱うかが課題でした。

研究チームは日本・アメリカ・イギリスで示されている工学の定義を参照し、共通する要素を探っています。

その結果、工学とは構造物・プロセス・システムなどを創り出す営みだと整理されました。

 

工学は実践活動として位置づけられた

 

提案された枠組みの中で、工学は知識の教科ではなく実践的な活動として位置づけられています。

つまり何かを設計して創り出す活動そのものが、STEMの学びの中心に置かれたわけです。

そして科学・技術・数学の見方を保ちながら創ることが、質の高い実践につながると考えられます。

 

3つの視点はそれぞれ何を担うのか

 

枠組みの中で、3つの分野は次のような視点を提供すると整理できます。

 

  • 科学:自然の仕組みを問い、根拠をもって説明する視点
  • 技術:材料や情報を最適に活用し、ものを実現する視点
  • 数学:数量や図形で捉え、筋道を立てて考える視点

 

創る活動のどの場面でどの視点を働かせるか、その設計こそが重要だと示されています。

 

ポイント

工学を中心の活動に据え、3つの教科の視点を失わずに創り出すことが、この枠組みの核心と言えます。

 

日常でSTEMの視点を育てる工夫

 

家庭で材料を測りながら料理をする様子

 

ここでは身近な場面での取り入れ方を具体的に考えていきます。

 

作る活動に3つの問いを添える

 

家庭や学校でできる第一歩は、工作や料理などの作る活動に問いを添えることです。

「なぜそうなるのだろう」

と仕組みを尋ねれば、科学の視点が働き始めます。

長さや量を測って比べれば数学の視点が、材料や道具を選び直せば技術の視点が加わるでしょう。

 

順序と組み合わせをデザインする

 

論文が強調するのは、学習過程と活動の適切な順序・組み合わせを設計する大切さです。

たとえば観察してから設計し、作って試して改良するという流れを意識してみましょう。

行き当たりばったりで終わらせず、どの場面でどの視点を使うかを決めておくだけで学びの質は変わってきます。

 

理論の枠組みである点も忘れずに

 

なおこの研究は理論的な提案であり、効果を実験で検証したものではありません。

それでも実践の質を見直す物差しとして、十分に役立つ枠組みだと考えられます。

最初は難しく感じるかもしれません。

まずは身近な活動を4つの視点で眺め直すところから始めてみてはどうでしょうか。

 

ポイント

特別な教材がなくても、作る活動に科学・技術・数学の問いを組み込めば、日常がSTEMの学び場に変わります。

 

まとめ

 

協力して学び合う子どもたちのイメージ

 

今回はChikahiko Yataさんたちが提案した、STEM教育の概念的な枠組みを紹介しました。

曖昧になりがちなSTEMの学びも、教科の見方を保ったまま創るという軸を持てば整理しやすくなります。

 

  • STEM教育は定義が曖昧なまま実践が先行していた
  • 工学は構造物やシステムを創り出す実践活動と位置づけられた
  • 科学・技術・数学の視点を保ち、活動の順序と組み合わせを設計する

 

ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。

 

【参考論文】

Conceptual framework of STEM based on Japanese subject principles

著者: Chikahiko Yata, Tadashi Ohtani, Masataka Isobe(2020年)

DOI: https://doi.org/10.1186/s40594-020-00205-8

 

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