京都大学の研究チームが、環境教育の授業実践に関する大規模な調査結果を発表しました。
この研究は、2015年から2024年までの10年間に発表された2273本の論文を対象にしたものです。
そのうち厳選された111本の論文を詳しく分析しています。
2025年にX. P. Zhang氏らが発表した論文のタイトルは
「Systematic Review of Environmental Education Teaching Practices in Schools」
です。
日本語にすると
「学校における環境教育の授業実践に関する体系的レビュー」
となります。
世界の環境教育がいま、どんな段階にあるのかを明らかにした研究です。
目次
論文の概要:世界の環境教育の授業を10年分まとめた研究

この研究は、世界各国の学校で行われている環境教育の授業を調べたものです。
対象となったのは、正規の学校教育で教師が実施した授業実践の研究です。
研究チームは、教育系の3つの学術データベースから論文を集めました。
2273本の論文をふるいにかけ、最終的に111本を詳しく分析しています。
分析には独自の枠組みが用いられました。
それが
「TPAC+E」
と呼ばれるフレームワークです。
ポイント
TPAC+Eとは、技術・教え方・教科内容の知識に「環境の知識」を加えた分析の枠組みです。
教師がどんな知識を組み合わせて授業をしているかを整理するために使われました。
研究の多くは事例研究やインタビュー調査の手法を使っていました。
対象は小学校から高校までの幅広い年齢層にわたります。
特にコロナ禍以降、デジタル技術を取り入れた環境教育の研究が増加しています。
わかったこと:効果的な授業と、残された課題

111本の論文を分析した結果、いくつかの重要な傾向が見えてきました。
効果的とされる環境教育の授業には、共通する特徴があります。
効果的な授業の4つの特徴
- 教科横断型の学び:理科だけでなく社会や美術など複数の教科を組み合わせる
- 屋外学習:教室の外に出て自然を直接体験する
- 参加型アプローチ:学ぶ側が主体的に関わる活動を取り入れる
- 批判的思考と共感の育成:情報を鵜呑みにせず考える力と他者への思いやりを育てる
こうした授業は、環境に対する意識や行動を変える効果が高いとされています。
「知識を教える」
だけでなく
「考えて行動する力」
を育てる授業が求められているのです。
一方で残る課題
しかし、多くの国や地域では依然として教科書中心の授業が主流です。
教師が一方的に説明する講義型の授業も根強く残っています。
また、研究の対象地域にも偏りがあることがわかりました。
ポイント
アフリカや南米などの途上国、そして東アジア地域の研究は非常に少ない状態です。
小学校段階での環境教育研究も不足しており、今後の重点的な取り組みが必要とされています。
さらに、教師の研修制度やカリキュラムの整備も十分ではありません。
環境教育を実践したくても、やり方がわからないという声が多いのが現実です。
日常で活かせること:学びの場で取り入れたい3つの工夫

この研究の知見は、日々の学びの場ですぐに活かすことができます。
特別な設備がなくても始められる工夫を3つ紹介します。
工夫①:身近な環境問題を「教科横断」で学ぶ
環境問題は、一つの教科だけでは捉えきれません。
たとえばごみ問題なら、理科で素材を学び、社会で制度を調べ、算数でデータを分析できます。
家庭でも、買い物や食事を通じて環境と暮らしのつながりを話し合えます。
複数の視点から考えることで、理解が深まります。
工夫②:屋外に出て「体験」から学ぶ
教室の中だけでなく、外に出て自然に触れることが大切です。
近所の公園や川辺を歩くだけでも、生き物や季節の変化に気づけます。
実際に見て触れた体験は、教科書の知識よりも記憶に残りやすいものです。
地域の清掃活動や植物観察なども有効な学びの場になります。
工夫③:デジタルツールを活用して「調べて発信する」
コロナ禍をきっかけに、デジタル技術を使った環境学習が広がっています。
動画やオンライン教材で世界の環境問題を調べることができます。
調べたことをまとめて発表する活動は、主体的な学びにつながります。
タブレットやパソコンを使えば、データの収集や共有も簡単です。
ポイント
大切なのは「教わる」から「自分で考え、行動する」への転換です。
学校でも家庭でも、問いかけや対話を通じて環境への関心を育てていきましょう。
まとめ

世界111本の研究が示すのは、環境教育には大きな可能性と課題の両方があるということです。
効果的な授業のヒントはすでに明らかになっており、日常の学びに取り入れることができます。
- 教科横断型・屋外学習・参加型の授業が環境教育に効果的である
- 教科書中心の授業から、体験と対話を重視する学びへの転換が求められている
- デジタル技術の活用や教師の研修充実が今後の鍵となる
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
Systematic Review of Environmental Education Teaching Practices in Schools: Trends and Gaps (2015–2024)
著者: X. P. Zhang, Wooseung Jung, Misuzu Asari(2025年)
DOI: https://doi.org/10.3390/su17198561