保育者の心の健康が子どもの成長を左右する?232人の調査が示す事実

オーストラリアで行われた調査に、232人の幼児教育者が参加しました。

その結果、職場の支援体制と離職リスクの間に、統計的に強い関連が見られました。

相関係数は0.63という高い数値を示しています。

この数値は、組織的なサポートが充実しているほど、辞めたいと感じる気持ちが低くなることを意味します。

この研究は、2021年にPatricia Eadie氏らによって発表されました。

論文タイトルは

「Early Childhood Educators’ Wellbeing During the COVID-19 Pandemic」

です。

コロナ禍という困難な状況の中で、保育者の心の健康がどのように影響を受けたかを明らかにした貴重な研究です。

 

 

 

論文の概要:コロナ禍の保育者232人を対象にした調査

 

幼児教育の現場で子どもたちと関わる保育者の様子

 

この研究は、コロナ禍が幼児教育者の心身に与えた影響を調べたものです。

2020年7月に、オーストラリア全土の保育者を対象にオンライン調査が行われました。

回答者の多くは、最も厳しいロックダウンが実施されたビクトリア州の保育者でした。

調査では、2つの検証済みの尺度が使われています。

 

  • ECPW(幼児教育者の専門的ウェルビーイング尺度)
  • 修正版STRS(子どもと教育者の関係性尺度)

 

ウェルビーイングとは、心身ともに健康で充実した状態を指す言葉です。

さらに、コロナ禍での具体的な経験についても質問が含まれていました。

この調査は、もともと保育者の健康問題を優先課題としていた研究ネットワークが企画したものです。

つまり、以前から保育者の心の健康に注目していた専門家たちが実施した研究といえます。

 

わかったこと:保育者の心の健康が子どもとの関係を左右する

 

保育者同士が支え合うチームの雰囲気

 

調査の結果、いくつかの重要な発見がありました。

まず、保育者のウェルビーイングが高いほど、子どもとの関係における摩擦が少なくなっていました。

心に余裕のある保育者は、子どもと穏やかで安定した関係を築きやすいということです。

さらに、ウェルビーイングが高い保育者ほど離職のリスクが低いことも示されました。

 

ポイント

職場の組織的サポートが充実しているほど、離職リスクが低くなるという関連が最も強く見られました(相関係数0.63)。

 

また、経験年数の長いベテランや管理職の保育者ほど、ウェルビーイングが高い傾向がありました。

逆に、経験の浅い保育者は心の健康を維持しにくい状況にあったことがうかがえます。

興味深いのは、コロナ禍の影響を受けながらも、全体的なウェルビーイングの得点は比較的高かったという点です。

これは、多くの保育者が困難の中でも前向きに仕事に取り組んでいたことを示しています。

ただし、それは個人の努力だけで成り立つものではありません。

職場からの支援がなければ、その前向きさを維持し続けることは難しいのです。

 

日常で活かせること:保育者を支える3つの視点

 

保育現場でのスタッフミーティングの風景

 

この研究の結果は、教育現場だけでなく家庭にも大切な示唆を与えてくれます。

ここでは、日常で活かせる3つの視点を紹介します。

 

1. 組織的な支援体制を整える

 

研究で最も強い効果が確認されたのは、職場の組織的な支援体制でした。

具体的には、定期的な面談や相談できる仕組みが挙げられます。

個人の頑張りに頼るのではなく仕組みで支えることが重要です。

これは保育の現場に限らず、学校や塾など教育に関わるあらゆる職場にあてはまります。

 

2. 経験の浅いスタッフへの配慮を意識する

 

調査では、経験の浅い保育者ほど心の負担が大きい傾向が見られました。

新人や若手が孤立しないよう、チームで声をかけ合う文化が大切です。

先輩と後輩がペアになって相談しやすい関係をつくることも有効です。

こうした配慮が、結果的に子どもへの関わりの質を高めることにつながります。

 

3. 教育者の心の健康を「子どものため」にも考える

 

保育者や教育者の心の健康は、その人自身だけの問題ではありません。

教育者の心の状態は、子どもとの関係性に直接影響するからです。

教育者が笑顔でいられる環境は、子どもにとっても安心できる場所になります。

教育者を支えることは子どもの学びと成長を支えることでもあります。

家庭でも現場でも、教育者の心身の健康に関心を持つことが大切です。

 

ポイント

教育者の心の健康を支える取り組みは、子どもの発達にも良い影響を与えます。

個人の努力だけでなく、組織全体での仕組みづくりが効果的です。

 

まとめ

 

笑顔の教育者と一緒に学ぶ子どもたち

 

コロナ禍の厳しい状況下でも、多くの保育者は前向きに働いていました。

しかし、その姿勢を支えていたのは職場の組織的なサポート体制でした。

 

  • 保育者のウェルビーイングが高いほど子どもとの関係が良好になる
  • 組織的な支援が離職リスクを大きく下げる
  • 経験の浅い教育者への配慮がとくに重要である

 

ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。

 

【参考論文】

Early Childhood Educators’ Wellbeing During the COVID-19 Pandemic

著者: Patricia Eadie, Penny Levickis, Lisa Murray, Jane Page, Catriona Elek ほか(2021年)

DOI: https://doi.org/10.1007/s10643-021-01203-3

 

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