発達障害のある子どもへの関わり方について、情報が多すぎて迷った経験はありませんか。
本やインターネットには様々な支援法があふれ、どれを信じれば良いのか判断は簡単ではありません。
実は科学的な根拠のある方法だけを、世界中の研究から選び抜いた大規模な調査があります。
今回は効果が確認された28の支援法の中身と、日常での活かし方を分かりやすく紹介します。
目次
自閉症支援に効果的な28の実践

まずは調査の規模と方法、そして28の実践が選ばれた経緯を順に見ていきましょう。
972本の研究を分析した大規模調査
今回手がかりにするのは、研究者のKara Humeさんたちが2021年に発表した調査です。
自閉症のある子どもや若者を対象にした支援研究を、世界中から集めて分析したものでした。
最初に見つかった論文はなんと31,779本にのぼります。
そこから質の高い研究だけを厳選し、過去の調査分と合わせて972本を統合したという規模です。
- 対象:0歳から22歳までの自閉症のある子ども・若者
- 分析対象:1990年から2017年に発表された972本の研究
- 結果:28の実践がエビデンスの基準を満たした
エビデンスに基づく実践とは何か
この調査の鍵となるのが、エビデンスに基づく実践(Evidence-Based Practice)という考え方です。
複数の質の高い研究で、繰り返し効果が確認された方法だけをこう呼びます。
一人の専門家の経験談や、一度きりの成功例では基準を満たせません。
つまり科学のふるいにかけて残った方法だけが、28のリストに載っています。
ポイント
この研究は2010年から続くレビューの3代目にあたり、約30年分の研究成果を積み上げて28の実践を特定しました。
意外と身近な28の方法の中身

次は28の実践の具体的な中身と、知っておきたい注意点を紹介します。
ほめ方や見せ方も科学になる
リストの中身を見ると、実は身近な工夫が数多く含まれています。
例えば望ましい行動をほめて伸ばす強化(Reinforcement)は、代表的な実践の一つです。
大人や仲間がやり方を実演して見せるモデリング(Modeling)も基準を満たしました。
絵や写真で予定を伝える視覚支援(Visual Supports)も、効果が確認された方法として知られています。
新たに加わった実践もある
今回の第3世代レビューでは、新しい実践もリストに加わっています。
その一つが体を動かすこと、つまり運動(Exercise and Movement)でした。
タブレットなどを使うテクノロジー活用型指導(Technology-Aided Instruction)も含まれます。
時代とともにエビデンスのリストは更新され続けているという点は、興味深いところではないでしょうか。
万能な方法は一つもない
ただし注意したいのは、どの実践にも得意分野と限界があるという事実です。
コミュニケーションに効く方法もあれば、行動面や学習面に向いた方法もあります。
効果が確認されたのは特定の目的に対してであり、リスト全体を万能薬と考えるのは早計と言えるでしょう。
研究チームは、目的や本人の特性に合わせて実践を選ぶ大切さを強調しています。
ポイント
28の実践は薬や特別な器具ではなく、関わり方や環境の工夫が中心で、家庭や学校でも取り入れやすい内容です。
家庭や学校で今日からできる工夫

ここからは日常で実践しやすい三つの工夫を具体的に取り上げます。
予定や手順を目で見える形にする
最初に試しやすいのは、視覚支援の考え方を取り入れることです。
一日の予定を絵や写真、文字カードで示すと、見通しが立って不安が和らぎます。
朝の支度や授業の流れなど、毎日繰り返す場面から始めてみましょう。
言葉の指示に目からの情報を添えるだけでも、伝わりやすさは大きく変わります。
望ましい行動をすぐに認める
次に役立つのが、強化の考え方です。
できた瞬間を逃さず、笑顔や言葉、好きな活動などで良い行動を認めていきます。
行動の直後に伝えること、そして本人が嬉しいと感じる形を選ぶことがコツだとされています。
叱って直すより望ましい行動を増やす発想の方が、長い目で見て効果的と考えられます。
やり方を小さく分けて手本を見せる
複雑な作業には、課題分析(Task Analysis)とモデリングの組み合わせが役立ちます。
例えば手洗いなら、袖をまくる、水を出す、石けんをつけるといった手順に細かく分けるのがコツです。
そのうえで大人が実際にやって見せると、まねをしながら学びやすくなるでしょう。
小さく分けて、見せて、できたら認めるという流れは、多くの学びの場面に応用できます。
ポイント
効果の現れ方には個人差があるため、うまくいかない時は方法を調整し、必要に応じて専門家にも相談してみてください。
まとめ

今回はKara Humeさんたちによる、自閉症支援の大規模レビューを紹介しました。
972本の研究から選ばれた28の実践は、決して専門家だけのものではありません。
見える形で伝える、良い行動を認める、手本を示すといった工夫は、あらゆる学びの場で生きてきます。
科学的根拠のある工夫を日常に取り入れるという視点が、これからの教育には求められます。
- 972本の研究の分析から28のエビデンスに基づく実践が特定された
- 強化・モデリング・視覚支援など身近な工夫が中心だった
- 目的や本人の特性に合わせて方法を選ぶことが大切
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
Evidence-Based Practices for Children, Youth, and Young Adults with Autism: Third Generation Review
著者:Kara Hume, Jessica R. Steinbrenner, Samuel L. Odom, Kristi L. Morin, Sallie W. Nowell ほか(2021年)
DOI:https://doi.org/10.1007/s10803-020-04844-2