電話をかけるのが苦手だと感じたことはありませんか。
メールなら落ち着いて書けるのに、電話だと身構えてしまう場面があります。
その苦手意識には、はっきりとした理由が隠れているのかもしれません。
2021年にPhilippa L. Howard氏らが発表した論文があります。
タイトルは‘Anything but the phone!’という印象的な言葉から始まります。
日本語にすると、電話だけは勘弁して、といった意味になります。
自閉スペクトラムのある大人が、どんな連絡手段を好むかを調べた研究です。
目次
論文の概要

研究の対象と目的
この研究は、自閉スペクトラムのある大人を対象にしています。
自閉スペクトラムとは、生まれつきの特性のひとつです。
人との関わり方や感じ方に、その人らしいスタイルがあります。
これまでの研究は、子どもや保護者への調査が中心でした。
本人の好みを直接たずねた研究は、ほとんどなかったと報告されています。
どのように調べたか
245人の自閉スペクトラムのある大人が参加しました。
6つの連絡手段を、好きな順に並べてもらう調査でした。
場面は、家族から行政サービスまで7種類に分かれています。
さらに自由記述で、その理由も書いてもらう形式です。
- 参加者:自閉スペクトラムのある大人245人
- 比べた手段:メール・電話・手紙・対面など6種類
- 想定した場面:教育から接客対応まで7種類
結果の概要
知らない相手や組織には、メールが好まれました。
反対に、電話はとても不人気だったと分かっています。
親しい相手には、対面と文字の両方が選ばれています。
ポイント
連絡手段の好みは、相手との関係によって大きく変わります。
分かったこと

最も重要な発見
最大の発見は、電話が強く避けられた点です。
電話は連絡の壁になりうるという事実が示されました。
電話は、考える時間がなく一度きりで消えてしまいます。
聞き取りや即答の負担が大きいと説明されています。
もう一つの注目ポイント
親しい相手では、対面も好まれることが分かってきました。
ただし、その前提は相手が自分を受け入れてくれることです。
安心できる関係なら、顔を合わせる会話も心地よくなります。
関係が浅いと、対面より文字が選ばれやすい傾向でした。
意外な結果や副次的な気づき
自由記述からは、4つのテーマが見つかりました。
- 電話は避けたい
- 文字でのやりとりが安心できる
- 素の自分か、取り繕う自分か
- 連絡そのものを避けてしまう
周囲に合わせて取り繕う行動は、カモフラージュと呼ばれています。
無理に合わせ続けると、強い疲れにつながることもあるようです。
ポイント
同じ人でも、相手や場面によって心地よい手段は違います。
日常で活かせること

連絡手段に選択肢を用意する
連絡の窓口を電話だけに絞らない工夫が役立ちます。
メールやチャットなど、文字の手段も用意してみましょう。
学校や家庭での連絡も、複数の方法から選べると安心です。
電話だけに頼らない仕組みが、参加の入り口を広げます。
相手との関係性を見つめる
対面が得意かどうかは、人によって大きく異なります。
相手が安心できる関係かどうかを、まず考えてみましょう。
無理に顔を合わせる前に、文字での対話も尊重したいところです。
文字でのやりとりを尊重する
文字の連絡は、考える時間を生み出します。
言葉を選び、落ち着いて伝えられる利点があります。
返事を急かさない姿勢が、相手の負担を軽くするでしょう。
子どもや学生にも、書いて伝える選択肢を残してみてはどうでしょうか。
まとめ

連絡手段は、人を支えることも妨げることもあります。
電話への偏りは、知らないうちに壁を作っているのかもしれません。
- 知らない相手にはメールが好まれた
- 電話は強く避けられる傾向だった
- 親しい相手では対面と文字の両方が選ばれた
手段を一つに決めつけない姿勢が大切だと言えそうです。
ぜひ今日から、教育や学びの場で取り入れてみてください。
【参考論文】
‘Anything but the phone!’: Communication mode preferences in the autism community
著者: Philippa L. Howard, Felicity Sedgewick(2021年)
DOI: https://doi.org/10.1177/13623613211014995